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“あの感覚”

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どう書けばいいのか悩んでいる言葉があります。

例えば「世界の中心で、愛をさけぶ」の映画なりドラマを見たとします。
この物語と今回の悩みに深いつながりはないけれど、とくかくそこには様々な困難を抱え、青春を過ごす主人公たちの姿がある。

ご覧になった方のなかには、なーんだくだらないと思った人がいたかもしれないし、自分の青春を物語に重ね、涙を流した人もいたかもしれない。

ぼくが悩んでいるのは、後者の方が感じたであろう感覚を表す言葉です。

青春映画などを見たときに感じる、あの感覚。
懐かしいような、切ないような、何かが胸にこみ上げてくるような感じ。
“川ガキ”の撮影を続けていると、頻繁にこの感覚と出会うので、それを表す適切な言葉をずっと考えているのです。

心が「ザワザワ」でいいのか、胸が「キューン」なのか、それとも「締め付けられる」なのか。
そもそも、もっと別の言葉があるんじゃないか、等々。

最近では、ヒグラシの輪唱を聞いたときや秋風に気付いたときも、あの感覚がやってくるようになりました。

沈下橋や潜水橋と呼ばれる、コンクリート製の橋があります。
増水すると水面下に潜ってしまうため、地方によっては潜り橋と呼ぶところもあります。
その名前のとおり、川面に近いのが特徴です。
しかし、かつては至るところで見かけたこの橋も、老朽化や通常の橋への架け替えにともない、各地から姿を消しつつあります。

昨年のこと。
宮崎県のある川で、この古びた橋から飛び込みをしていた“川ガキ”に出会いました。
同い年くらいの中学生の男女です。
部活の練習が終わると、いつもここで汗を流し、遊んで帰るとのこと。
と、いうことを、男子と女子のグループからそれぞれ聞きました。
両方のグループを行ったり来たりしているのは、カメラを抱えたぼくのみで、お互い意識しているのかいないのか、男女のグループ間に会話はありません。

出会った記念にと、みんなの了解の下、集合写真を撮りました。
少し離れたところから望遠レンズで撮るからと、橋に腰掛けてもらいました。

川のなかを歩き、さあ、この辺でいいかなと振り返った瞬間。
おもわず笑ってしまいました。

男女の塊が10メートルぐらい離れていたんです。
おーい。
それじゃファインダーに入らないよーと叫んでみても、女の子たちはキャラキャラ笑うばっかりで、男の子たちは口々にこれ以上無理でーす。
だって。

そんなやりとりを何度か繰り返し、やっと数メートルまで近づいてくれたところでシャッターを切りました。
写真を見るたび、当時のことを“あの感覚”とともに思い出します。

懐かしいような、切ないような、ココロが締め付けられる感覚。
これでいいのかなぁ。
ちょっと違う気がするんだけど…

*旧ブログより*

2004.9/17 | コメント (0) | トラックバック (0)