空を見上げ、草むらへ
東京の山手線車内で、こんな会話を聞いたことがあります。
「最近、カエルって見ないよなぁ」
「少なくなったよねー」
「子どものころは、たくさんいたのに」
「カエルだけでなく、虫とかも最近見ないね」
「いなくなったんじゃないの」
話をしていたのは20代前半の男女ふたり。
カエルの写真が印刷された中吊り広告を見つけての会話です。
ぼくが子どもだったころ。
行動範囲と呼べる場所は、通学路や自宅周辺などがせいぜいでした。
それでも面白いのが、そんな身近な場所でも十分に驚く発見があり、出会いがあった。
今とは比べ物にならないくらいの集中力と時間を使い、生きものを探し遊んだ子ども時代。
なんでもない空き地で、飽きもせずに終日を過ごすことだってできた。
手の届く範囲がすべてだったけれども、その範囲においては、大人顔負けの世界の広さがあったと思います。
大人になった今。
いないと感じたのは、見つけることをしなくなっただけ。
カエルがいなくなったのではなく、カエルのいる場所に出掛けていないだけ。
トンボが少なくなったのではなく、空を見上げる時間が減っただけ。
バッタがいなくなったのではなく、草むらへ近づかなくなっただけ。
生きものの存在に気が付かなくても生活はできるけれど、そういえば最近見なくなったぁと思ったら、探してみることをお勧めします。
*旧ブログより*
2004.9/20