小さな胸を高鳴らせ、ヒーロになろう!(転載3/3)
水中メガネ越しに川のなかを眺め、泳ぎ回る魚を見つけては胸を高鳴らせ、その姿を見失うまいと一生懸命追いかける川ガキたち。
そのうち眺めるだけでは飽き足らず、魚を捕まえることに好奇心が移りはじめる。
すると、水中を覗く姿が真剣そのものへと変わっていくから面白い。
川ガキは、魚を捕ってはじめて『立派な川ガキ』といえるのだ。
しかし、最初から簡単に魚が捕れるはずはなく、それが大きな獲物となればなおさら難しい。
目の前を泳ぐ魚を簡単に捕まえることができれば、テレビの主人公のようなヒーローになれる。
でも、捕れない。
魚だって必死なのだ。
やみくもに網を振り回しても、欲しい獲物は手に入らない。
自分の技量にあった魚を狙い、経験を積むしかないのだ。
川底を慎重に覗いていくと、石の間から“テナガエビ”の長いヒゲが揺れているのを見つけることがある。
嬉しくて飛び跳ねたい衝動を我慢し、静かにそっと石を持ち上げ、エビがいるあたりに網をかぶせる。
テレビゲームよりもワクワクする緊張感。
仲間同士で競い合い、獲物が捕れるたびに川面いっぱいに響く雄叫び。
それがおかしくて、網を持つ川ガキを見つけるたびに、ぼくも彼らに交じって、川のなかへ入るのだ。
ママレード6月号より(2003年6月1日発行)より転載
2004.10/26
川のなかをのぞいてみよう!(転載2/3)
水がゆるみ始めると、我れ先にと川へ飛び込む川ガキたち。
水中メガネや箱メガネと呼ばれる昔ながらの道具越しに広がる、キラキラと揺らめく眩しい世界。
川のなかへ入り、これら光景をいったん眺めてしまうと、川ガキでなくても川遊びの魅力にやみつきになってしまうだろう。
泳ぎながら水中を眺める子がいれば、じっと動かずに眺めている子もいる。
川底を歩く小さなエビや身体のまわりを泳ぐ魚をみつけては、川ガキたちは仲間を呼び、歓声をあげる。
そして、水のなかにもかかわらず大きく口を開けて笑うのだ。
どんなことも最初は小さな好奇心から始まる。
大人だったら見過ごしてしまうような小さな生きものにも関心を持ち、不自然な姿勢でいることすら気付かず、何時間でも水中を眺めている川ガキ。
夢中になって水中を眺めている川ガキを見かけるたび、ぼくはなんだか幸せな気分になる。
「川のなかをのぞく」ことは、特別な川遊びではないけれど、きっとたくさんのことを得ているのに違いないと、ぼくは思うのだ。
写真説明
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顔だけを水につけ、同じ姿勢でいること数分間。
そんなに集中していったい何を見ているの?
ぼくも気になって、彼のマネをして水深30センチの川のなかをのぞいてみた。
水面の揺らめきが川底に映り、とても幻想的な光景が目に飛び込んできた。
なるほどこれはキレイだなぁ。
でも、うーん。腰が痛い。
ママレード5月号(2003年5月1日発行) より転載
2004.10/25
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