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あと何人自殺したら工事を止めますか

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九州に来ています。
昨日、久しぶりに諫早湾を眺め、普賢岳の麓を歩きました。

諫早湾が潮受け堤防で閉め切られてから8回目の秋。
堤防の内側、潮の満ち引きがなくなった土地にセイタカアワダチソウが広がっていました。
風に揺れ、ざわめく黄色の花々。

今年も、もうじき海苔養殖の季節がやってこようとしています。

当初から危惧された諫早湾閉め切りによる漁業への影響は、年を追うごとに深刻さを増し、いまや堤防の外側に広がる有明海は瀕死に近い状況だといわれています。

今年7月。
承諾殺人罪に問われたある男性の判決が福岡地裁久留米支部で言い渡されました。

有明海で海苔養殖を営んでいた男性の裁判です。
男性は借金苦から母親との心中を決意し、自宅隣の作業小屋で母親を殺害した罪に問われていました。

母親は殺害前、男性に「お前とならよかよ。父さんの借金ば、担がせてごめんね」と語ったそうです。
そして息子に首を切られ、失血死で亡くなりました。
後に続こうとガソリンを浴びた男性は、100円ライターを握りしめたものの、子どもの顔が頭に浮かび、手が震え、どうしても火をつけることができなかったといいます。

海苔の不作が続き、漁具購入等で借り受けた資金返済の目処が立たず、働いても働いても苦しくなる生活に絶望した末の行動と、判決にはあります。

検察側の求刑は懲役5年でしたが、判決は「懲役3年・保護観察付きの執行猶予5年」。
窮状に理解を示し「同情を禁じ得ない」という言葉で、ひとつの裁判は終わりました。

約4000人もの有明海漁民が「不作が続き、多額の借金を抱え、将来が見えない。今回の事件は他人事ではない」と、男性に対して寛大な判決を求める嘆願署名を提出したことも判決に影響したのかもしれません。

東京新聞(2004.8.28付)の記事によれば、有明海周辺では干拓事業開始後に70人が自殺し、影響の大小こそあれ、漁業不振は無視できないほど深刻な影を落としています。

「あと何人自殺したら工事を止めますか」

海苔不作に代表される漁民の度重なる訴え。
そのあまりにも悲痛な言葉に、おもわず息が止まります。

事業の中止、水門の開放を求める漁民の声に、政府は真摯な態度で耳を傾けてほしい。
そしてこのような悲劇を繰り返さぬ決断をしてほしい。
切に、そう願います。

*旧ブログより*

2004.10/16

カーテン越しの…

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鳥取と岡山をぐるっとまわり、昨夜遅く帰宅しました。
“川ガキ”ネタではないけれど、「懐かしい感覚」繋がりということで、旅先で見かけた光景を紹介します。

始発駅となる津山駅で、岡山行き列車へ乗り換えたときのこと。
二両編成のディーゼル列車に乗り込んだものの、出発時間までだいぶありました。
乗客は、部活帰りらしい学生や買物帰りの家族、ほんのわずかな旅行者の数人のみ。

退屈を紛らわすため回りを見渡すと、向かいのボックス席でお菓子を食べていた二人の中学生が、慌ててカーテンを閉めるのに気付きました。

どうしたんだろう?と興味津々に観察すると、彼らはカーテンをほんの少しだけ開けて、窓の外をのぞきはじめたのです。

その後ろ姿は怪しさを通り越し、けっこう笑えます。
で、そのときパチリと撮影したのが、上の写真。

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2004.10/12

一寸法師

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今から5年程前。
九州の某川で、ひとりの男の子と出会いました。
某川をカヌーで下る旅をし、終点となる川岸にその子がいたのです。
人見知りをまったくしない、小学生になったかならないかぐらいの子どもでした。

その子は、上流から流れてくるカヌーを見つけ、急いで川岸へ降りてきたといいます。
そしてぼくが上陸し、カヌーを岸にあげて後片付け作業を始めると、近寄ってきたのです。

「どこからきたと?」
「それは何に使うと?」

こんな質問をたくさんもらい、楽しい会話をしたのを覚えています。
で、最後には「カヌーに乗せて欲しいなぁ」。

大人はけっこういい加減な返事で、その場を誤摩化したりするもの。

「そうかぁ。でも、もうすぐやってくる列車で帰らないといけないから、今度会ったときに乗せてあげるよ」

本気で次に会ったときに乗せようとは、恥ずかしいけれど思っていませんでした。
そもそも、次があるかどうかさえ怪しいものだった。
誰もが思いつく、その場限りの簡単な嘘。


先日、偶然にもそのときの男の子と再会しました。
その子のお母さんが、ぼくの写真展を見に来てくださったのです。
お言葉に甘え、その日の晩は男の子の家に泊まることに。

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2004.10/ 7

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